振幅は何を意味していますか?

 M1またはM3型TWA法は,基本的に位相データから熱拡散率を算定し,振幅データは使用していません.振幅もまたの周波数によって変化し熱拡散率を算定することもできます.ただし,振幅(以下amp)は入力電圧の変動等外乱に敏感なため扱いが不安定になります.諸条件が全く同一なら,熱伝導や比熱の重要な情報を含んでいます.
 たとえば kd=π(パイ・180°)になる周波数は試料によって異なりますが,この周波数での振幅を基準試料と比較することで熱伝導率への換算も可能ですが,試料の形状,熱伝導率,配向などでも変化します.一例を挙げると,ジルコニア標準板で オート測定した場合,二つの周波数での振幅(Amp)の値は3000と1000程度に調整されていますが,ポリマーなどを測定しても,周波数は異なっても同程度のampになります.ところが,面方向へ分子が並んだ配向高分子などは,1000−350などと,ぐっと小さくなります.ampは,面方向への熱流が大きくなる金属などでも見かけの熱容量が増加するための現象といえます.見かけの熱容量は,試料種と異方性のほか,サイズ,厚さ,入力条件,センサー感度などの影響もあり,比熱や熱伝導率への換算はきわめて複雑になるために,モバイル機は現段階で振幅を物性換算計算に使っておりません.
 しかし,材料の熱特性が反映されていることは明らかなので,同一形状,同一条件,同種の試料間で比較すれば,十分に有用であることを示しています.たとえば,配向試料では配向の程度が敏感に反映されるからです.注意深く測定すれば試料独特の特性(物性ではありません)が見つかるかも知れません.