大きなものはより大きく,小さなものはより小さく

 測定装置を製造販売していると,テスト測定はもとより,依頼測定,試し測定なども誰よりもたくさん行うことになる.流行り物が多くなるので,ポリイミド,ナノチューブの応用,LED関連材料,シリコンウエハ,放熱材料,真空断熱材,ナノゲルなどは,それこそ数え切れないほど膨大な測定をしている.おかげで最適条件はほぼ把握しているし,異常データもすぐにわかる.
 測定装置といえば,相手が何者か気にしないで,淡々とデータを出してくれる.絶対値というより,どっちが大きいといった比較をするものだから,測定量が多いということは判定には非常に有効となる.クライアントの皆様は,ある目的をもって材料設計しているので,強い思い入れがある.しばしば,弊社で測定したデータに,猛烈に反発される方がおられる.「そんなはずはない」と.一般的傾向として,熱伝導性のよい材料は,実際より,数倍大きく,断熱材は一桁低い値を信じている方が多いようだ.特に炭素系系は,真値がわからないので相当さば読みしている様に感じる.材料は化学式で決まるのものでも標準状態があるものでもない.熱伝導に関しては,机上で設計しても.そんなに驚くような値にはならないように思う.
 いい値が出たときは慎重に,気に入らないデータが出たときは冷静にというのが,測定機のつぶやきだ.