長い道のり

 

起業の計画を,バンクーバーからビクトリアへ向かうフェリーのデッキで中国人の友人に語ったのが2001年9月.あのニューヨークの大事件の何日か前のこと.翌春にベンチャー起業して,最初は夢見る人の熱気があったものの,すぐに実務の様々な壁にぶつかった,厳しい現実.資本構成の変化,事務所の開設移転,そして何より商品開発の困難さを実感しました.とにかく軌道に乗ったのが5年目ぐらい.

 いままでの熱伝導測定機とは全く違った独創のかたまりを作り上げ,「こんなので測れるの?」と冷たい視線を浴びながら,徐々に実例を示しては売り上げを伸ばしつつ,ソフトを改良し,方式の細部を見直し,川崎の協力企業に製造依頼に赴き,三鷹に電子基板製作相談に行き,ISOの会議に参加し,関連各社と提携話をしたり,特許事務所と揉めたり,産学連携オフィスを追い出されたり.当局の理不尽と戦い,出資者と調整し,仲間をなだめたりと,今となっては,あらゆる難事をよく抜けてきたなと感無量です.

 小型軽量,省エネマシン,経験不要,サンプリング不要,迅速測定,国際標準化と20年も前から今を想定していたのです.モバイルなんて言葉は,当時は無かった.独創的なベンチャーというか,ベンチャーは独創性がなければ大きなものに飲み込まれる様な気がします.20年の風雪に耐えたので,サステイナブルに方法論になり企業になったようです.今後もいいものを手作りで作り込んでいこうとあらたな20年,いや10年に向けて夢想しようかと思います.