マリア・カラス

  先日53年ぶりに再会した友がいた.当然話は多岐にわたったが,その中に昔のオペラ歌手の話題があった.日本ではオペラファンは少数派で,歌手の名前もほとんど知られていない.マリア・カラスは唯一の例外で,少なくとも古い世代ではディーバである.独特の声質,その劇的な生涯などがそうさせているのだろうが,やはりオリジナルティというかオンリーワンというオーラがあった.友はブルーレイの新しい録画を手渡してくれた..新しいブルーレイは映像もあって,いいものはいいと久しぶりにカラスを再発見できた.
  音楽の録音(録画)は,プラスチックの発展そのものが反映されてきた.SPのシェラック,LP時代の塩ビ,テープのポリエチレンテレフタレート,LDのアクリル樹脂,そしてCD,DVD時代のポリカーボネートなどである.どれが音質がいいか,長期保存に耐えるかをかなり議論し,開発してきたのである.実はわたしもその一翼を担っていた.それらの結果,新素材が現れるたびに,音が良くなりましたよと,カラスは買い換えを要求してきた.少しでもいい音で聞きたい.レコード会社の策略にはまって,我が家にも新旧の同じ音源のものがたくさん溜まることになる.
  ところで,この機会だからと,50年前に家庭教師のアルバイトをして買い求めたLP「トスカ」全曲盤LPを押し入れの奥から探し出して,聞いて見て驚いた.音が悪くない,感動も当時と同じでかわらない.当時塩ビのレコードは50年も経ったら,溝がつぶれて使い物にならないと言われていた.それがどうだ,音に膨らみがある.一方でいい音を永遠にがうたい文句だったCDの方がトラブル続発である上,音が無機的に感じられる.何のこっちゃ.
  カラスの古い歌声?に乗って50年の歳月を飛び越えて,懐かしい古き良き時代が戻ってきた様におもう.録音音楽は虚の世界だとしても,プラスチックの板の上に,50年以上も変わらずに,感動を保てるのは,往時の材料技術者のなせる技か. 

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